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魚のはく製(下)家族いやす自然 感謝込め |
| 流線形の体を覆う真珠のような斑点、水面のえさをにらむ鋭い目――。 板に掲げられた渓流魚・イワナのはく製が、今にも書斎の壁や机の上に 飛び出し、俊敏に泳ぎ回りそうに思えた。渓流釣り30年。 那須連山に近い栃木県西那須野町に暮らす徳重寛巳さん(53)は、 魚のはく製を趣味にして1年足らずだが、腕前は免許皆伝も目前。 釣り仲間の間で、その「リアルさ」が評判になり、最近は、顔も知らない 釣り好きが、人づてに家まで見学にやってくる。 |
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| 自宅で渓流魚のはく製作りを楽しむ徳重さん夫婦 (栃木県西那須野町の自宅で)=川口正峰撮影 |
きっかけは、同県栃木市の「はくせいスクール」のメール通信教育だった。
根気と集中力、色彩感覚がいる作業だが、凝りだしたらのめり込む性格。
講座を受け始めてから、買ってきた魚も含め30、40と試作を重ねるうちに、みるみる腕を上げた。
お気に入りの釣り場、福島・奥只見のイワナは、ダム湖のものはグラマーでヒレが小さく、
逆に渓流ものはスリムでヒレが大きい。
底石の色で体色も変わる。徳重さんは、エアブラシを器用に扱って、その辺を実に丁寧に再現していく。
10年前、徳重さん一家は千葉県に住んでいた。排ガスが原因で、子供3人が皆、重いぜん息を患っていた。
「勤め先は都内だしなあ……」と悩んだ。
ある日、家から奥只見へ行く途中の西那須野町が、自然環境に恵まれ、新幹線通勤も可能なことを知った。
一念発起して、家族で転居した。週末には一家で山へ出かけ、釣りをして遊ぶ。
澄んだ空気をたっぷり吸わせたら、3人ともぜん息が消えた。
「釣りや魚、そしてこの自然に感謝しています」。
だから、釣った魚のほとんどは放流し、ごく一部をはく製に回しているという。
趣味に没頭する徳重さんだが、家族のために遠距離通勤を続けた姿を見ている妻の幸枝さん(47)は、
「あれこれ口出しせずに、やりたいことをさせてあげたい」と優しい。
奥只見の渓流釣りは、沢の雪が消える4月下旬からが本格シーズン。
今は、二男の卓朗さん(17)が近くの川で釣ったニジマスを、極上のはく製にしようと張り切っている。
卓朗さんは3人の子供の中で1番の釣り好きで、腕を上げている。でも最近は、友達とばかり釣りに行く。
「もう父親の存在を忘れちゃったのかな」と寂しく思っていただけに、「父さん、このニジマス、頼むよ」と
言われた時は心底うれしかったという。
「また、みんなで釣りに行きたい」
そんな願いを胸に秘めながら、リアルに、細部まで丁寧にと、エアブラシを使う。
今回のニジマスは、「徳重工房」の最高傑作になるような気がしてならない。
(遠藤 雅也)
◇はくせいスクール(栃木県栃木市)代表 並木和男さん 魚のはく製は静かなブームで、いくつかある私の弟子の工房では、注文から完成まで1年半待ちという 子どもが、魚は切り身で泳いでいると勘違いする時代。 はくせいスクール(ホームページhttp://www.k-yamame.com/ |